「覚悟の人」をよんで

少し変な表言ですが近代史の幕末、維新で薩長方{官軍)を表、幕府方を裏と考えて、私は裏から余り近代史の小説を読む機会に巡り合いませんでした。
この度佐藤 雅美著「覚悟の人」小栗上野介忠順伝{岩波書店)を読みすごく感激しました。本書は極めて格調が高く、一切無駄がなく読むものにとって冗長を先ず感じさせないというのが私の感想です。
小栗は外交奉行で渡米使節として米国に赴き国務長官と日米通過の問題について日本が米国に対して大きなマイナスがあるので其れの是正のために話し合いま。そこで彼らしい粘りの交渉を行います。
帰国後「生麦事件」などを巡り財政問題が発生しますが何とか切り抜けます。
当時フランス相手に500万ドルの借款をし軍隊を持つための「陸軍訓練所」の設置、海軍も設置しなければならない。この考えは慶喜の施政方針に一致した。一致するのはこんなときだけだと小栗は考えます。
同時に横須賀に製鐵所の建設など幕府の骨格ずくりを急ぎます。
小栗は米国より帰国してから任免70回といはれているが数多くの役職を経験している。幕末の終りに慶喜は多岐に亘って指揮命令を出しているが]著者は「慶喜の政治オンチぶりには目を覆うものがあった]と述べている。
この当たりこの書の圧巻で一気に読ませる。
表面の華やかな薩長の活躍ぶりには異論はないが裏面の小栗上野介忠順のような作品も地味ながらそれなりに光彩を放つ立派な作品です。